認知症
正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響が見られる疾患が認知症です。 認知症では、物事を記憶したり判断したりする能力や、時間や場所・人などを認識する能力が下がるため、日常生活に支障が生じてきます。
認知症の症状
正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響が見られる疾患が認知症です。 認知症では、物事を記憶したり判断したりする能力や、時間や場所・人などを認識する能力が下がるため、日常生活に支障が生じてきます。
- もの忘れがひどい
- 判断・理解力が衰えた
- 時間・場所が分からなくなる
- 人柄が変わる
- 不安感が強い
- 意欲がなくなる
など
認知症の原因
認知症は単一の疾患ではなく、いくつもの種類が知られています。主なものには次の4つがありますが、認知症のうち60~70%はアルツハイマー型認知症で、約20%は脳血管型認知症と言われており、認知症の約9割をこの2大疾患が占めています。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症では、アミロイドβ(ベータ)などの特殊なたんぱく質が脳に蓄積し、神経細胞が壊れて減ってしまうために、脳の神経が情報をうまく伝えられなくなり、機能異常を起こすと考えられています。
また、神経細胞が死んでしまうことによって脳という臓器そのものも萎縮していき、脳の指令を受けている身体機能も徐々に失われていきます。アルツハイマー型は認知症のなかでも一番多いタイプで、男性よりも女性に多く見られます。
脳血管型認知症
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳血管性の疾患によって、脳の血管が詰まったり出血したりして脳細胞に酸素がいき届かなくなり、神経細胞が死んでしまうことによって、このタイプの認知症は発症します。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症では、レビー小体(神経細胞にできる特殊なたんぱく質)が脳の大脳皮質(物事を考える場所)や、脳幹(生命活動を司る場所)にたくさん集まってしまいます。レビー小体が多く集まっている場所では、情報をうまく伝えられなくなるため、認知症が起こります。
前頭側頭型認知症
頭の前部にある前頭葉と、横部にある側頭葉が萎縮することによって起こるタイプの認知症です。若い人にも、発症が見受けられます。
認知症の治療法
認知症は、初期の段階から適切な治療を受けることにより、多くの場合、病状の進行を遅らせることができる場合が多く、早期診断と早期治療がとても重要です。
特に被害妄想や興奮など家族に影響を及ぼす症状は、治療や環境調整により大幅な改善が見込めます。
薬物療法
アルツハイマー型認知症の薬物療法には、認知機能を増強して中核症状(記憶障害や見当識障害(自分の置かれている状況がわからなくなる)など、脳の神経細胞が壊れることによって起こってくる症状)を改善し、病気の進行を遅らせる治療と、周辺症状(不安、焦り、怒り、興奮、妄想など)を抑える治療があります。
脳血管型認知症では脳血管障害の再発によって悪化していくことが多いため、「再発予防」がカギとなります。脳血管障害の危険因子である高血圧、糖尿病、心疾患などをきちんとコントロールするとともに、多くのケースで脳梗塞の再発を予防する薬が用いられます。
また、意欲・自発性の低下、興奮といった症状に対して脳循環・代謝改善薬が有効な場合もあります。抑うつ症状に対しては、抗うつ薬が使われたりもします。
早い時期に薬物投与を始めると、より改善効果の高いことが知られていますので、認知症についても、やはり早期発見と早期治療が大切になります。
非薬物療法
薬物を使わずに脳を活性化し、残っている認知機能や生活能力を高める治療法です。
認知症と診断されても、本人にできることはたくさん残っています。まずは家庭内で本人の役割や出番をつくって(洗濯物をたたむ、食器を片づけるなど)、前向きに日常生活を送ってもらうことが大切です。
また、昔の出来事を思い出してもらう(回想法)、無理のかからない範囲で書き物の音読や書き取り、計算ドリルをする(認知リハビリテーション)、音楽を鑑賞したり、演奏したりする(音楽療法)、花や野菜を育てる(園芸療法)、自分は誰で、ここはどこかなど、自分と自分のいる環境を正しく理解する練習を重ねる(リアリティ・オリエンテーション)などの方法が効果的です。ほかにも、ウォーキングなどの有酸素運動を行う(運動療法)、動物と触れ合う(ペット療法)などの治療が知られています。